水虫
足の指の間や足の裏によくみられる「水虫」は、白癬菌という真菌(カビ)の一種が皮膚に感染して引き起こされる疾患です。そのため「足白癬」とも呼ばれます。土踏まずや踵(かかと)、爪にも感染する場合があり、爪の場合は爪水虫と呼ばれることもあります。このほか手や頭皮、陰部や体などどこにでも感染することがあり、日本人では6人に1人が白癬菌に感染しているとも言われています。
水虫の場合、市販薬を使用している患者様も多いかと思いますが、中には水虫と似た症状を引き起こす別の皮膚疾患もあり、その場合、市販薬によって皮膚症状が悪化してしまうこともあります。水虫が疑われる場合は、一度、皮膚科をご受診ください。
水虫の原因
水虫は白癬菌への感染で発症します。感染してもすぐには発症しませんが、皮膚が高温多湿の状態になると白癬菌が増殖して症状があらわれます。とくに足に発症しやすいのは、靴や靴下を履くことで蒸れやすいからと考えられます。また白癬菌は、皮膚の角質の成分であるケラチンを好むため、踵など角質の厚い部分には増殖しやすい傾向にあります。
白癬菌の感染経路としては、白癬菌を持った人に触れる、あるいは白癬菌を持った人が触ったものに触れることが挙げられます。家庭のタオルや爪切り、スポーツジムのプールやお風呂場、足ふきマットなどから感染するリスクもあります。そのため、バスマットやスリッパ、タオルなどの共用を避けることが重要です。
水虫の症状
水虫でよく知られている症状は、足の指の間などで皮がむけたりジュクジュクしたりするものでしょう。多くはかゆかったり痛かったりしますが、こうした症状がすぐに出ないものもあります。
このほかには、小水疱型といって足の指先や土踏まずに感染して小さな水疱ができるタイプや、角質増殖型といって踵に感染し角質が厚くなり、ヒビが入るといった症状をみせるタイプがあります。このタイプの場合、かゆみも少なく、水虫と気づかないこともあります。また爪水虫の場合は、爪が厚く、白くなって、脆くなります。重症化すると爪が大きく変形してしまうこともありますので、早めに治療を開始することが重要です。
水虫の治療
まずは検査により水虫の診断を確定させます。水虫が疑われる部分の皮膚や爪などの一部を採取し、顕微鏡で白癬菌の有無を確認し、水虫と診断が確定した場合は、抗真菌薬の外用薬(塗り薬)による治療が中心となります。爪水虫に関しては、爪の中まで成分が届きにくいこともあり、内服薬(飲み薬)を第一選択としています。
内服治療を受ける場合はほかの薬との飲み合わせや、肝機能障害がないかを確認する必要があります。お薬手帳や、直近の採血結果をお持ちいただくとスムーズかと思います。
いぼ
一般的に「いぼ」と呼ばれるものはさまざまな種類のものが含まれています。
そのひとつとして尋常性疣贅と呼ばれるヒトパピローマウイルスが関与するいぼがあります。皮膚にできた小さなキズにウイルスが感染して発生するもので、手指や足の裏にできやすいです。同じくウイルス性のいぼで「みずいぼ」、医学的には「伝染性軟属腫」と呼ばれるものも有名です。白からピンクぽい色味の丘疹で、小学生くらいまでのお子さんによくみられ、感染力が強くのが特徴です。ひっかくことでウイルスがつきやすくなるため、乾燥肌や湿疹を持つお子さんはかかりやすいです。
このほかにいぼとされるものとしては、若い人に多いと言われる扁平疣贅、主に性交渉で感染する尖圭コンジローマなどがあります。これらもウイルス感染によるものです。ほかには加齢や紫外線が関係していると考えられている脂漏性角化症(老人性イボ)や、首やわきなどに多発しやすいスキンタッグ(軟性繊維腫)、皮脂腺が大きくなってできた脂腺増殖症などもいぼと呼ばれます。
悪性のものが混ざっていることもあります。
いぼの原因
尋常性疣贅はヒトパピローマウイルスの感染によって発症します。中でも通常のいぼは2型や57型などのヒトパピローマウイルスが原因となります。ヒトパピローマウイルスには尖圭コンジローマや子宮頸がんの原因となるものもありますが、これらは別の型で、いぼの原因となるウイルスとは関係ありません。
また伝染性軟属腫(水いぼ)は、ポックスウイルスに感染することによって発症します。いぼも水いぼも、接触することで皮膚や粘膜の小さな傷からウイルスが感染するため、皮膚の別の場所や、ほかの人に感染する危険性があります。
いぼの症状
尋常性疣贅(いぼ)では、数㎜~1㎝程度の小さな皮膚の盛り上がりがあらわれます。あらわれるのが一つだけのときもあれば、多数のときもあり、それらが集まって融合し、皮膚に広がる場合もあります。足底で硬くなると痛みを伴うこともあります。
伝染性軟属腫(水いぼ)の特徴は、中央が窪み、つやのあることです。ブツブツとしたもので、つぶすと白く粘性のある内容物が絞り出されます。それが別の場所に付着すると伝染し、同様のブツブツが発生します。こちらも多くの場合、痛みやかゆみはありません、
いぼの治療
いぼの診断は、基本的に視診やダーモスコピーと呼ばれる拡大鏡でおこないます。一部を切り取って病理検査を行う場合もあります。
ウイルス性のイボに対しては、「冷凍凝固術」を行います。これは-196℃の液体窒素を染みこませた綿棒やスプレーで患部を急激に冷やし、凍らせて除去するものです。治療直後は、水疱や血豆ができ、痛みも少し伴いますが、約2週間でかさぶたのように変色し取れていきます。
この冷凍凝固術は、大きさやウイルス感染の状況によって、1~2週間おきに繰り返すなど、複数回の治療が必要になることがあります。このほか、角質を柔らかくする塗り薬や厚くなった角層を削る処置を併用することがあります。水いぼは基本的に半年から数年で治癒しますが、勢いがある場合など、特殊な形状のピンセットを用いて内容物を圧出し、除去することもあります。
イボによっては手術切除や、自費診療のレーザー除去をお勧めすることもあります。
多汗症
汗をかくことは体温の恒常性を保つため必要な機能です。
しかしたとえば掌に汗をかいて、ノートなどに汗がしたたり落ちて字が書けないほどになったり、脇の下に過剰に汗をかいて、服に汗ジミができてしまったりと、日常生活に支障をきたすほどの状態であれば、治療を必要とする可能性があります。
日本皮膚科学会のガイドラインでは、以下の6つの症状のうち、2項目以上当てはまる場合を多汗症と診断しています。
- 1)最初に症状がでるのが 25 歳以下であること
- 2)対称性(腋窩の場合は両脇の下)に発汗がみられること
- 3)睡眠中は発汗が止まっていること
- 4)1 週間に1 回以上多汗のエピソード(症状が出ること)があること
- 5)家族歴(家族に同様の症状があること)がみられること
- 6)それらによって日常生活に支障をきたすこと
多汗症の原因
多汗症は過剰な汗腺の活動によって、慢性的に通常の体温調節の必要以上に発汗してしまうものですが、具体的な原因は完全にはわかっていません。遺伝的要因も考えられていますが、神経系の異常や感染症、内分泌代謝異常が関与しているものがあるとも言われています。また、特定の刺激に対する過剰な反応や、精神的ストレスが引き金となって、多汗症があらわれる場合もあるとされています。
多汗症の症状
多汗症は、全身に過剰な発汗がみられる「全身性多汗症」と、身体の一部、とくに手のひらや足の裏、脇、顔、頭部などで過剰な発汗がみられる「局所性多汗症」があります。発汗の程度には個人差があり、少し汗ばむ程度から、汗がしたたり落ちてしまうほどのものまであります。基本的に睡眠中は発汗しません。
多汗症は日常生活に以下のような支障をきたすことがあります。
手汗がひどい場合は、握手が出来ない、テストの用紙がふやけてしまう、スポーツする際に手が滑る。脇の場合は汗じみやにおいが気になる、など
手掌やわきの原発性多汗症については保険適応の薬剤があります。お気軽にご相談ください。
多汗症の治療
近年、保険適用で処方できるようになったものとして、抗コリン作用のある外用薬があります。わきや手のひらの多汗症に対するもので、副交感神経の働きを抑え、発汗を抑制するものです。
さらに症状が改善しない場合は、腋窩多汗症ではボツリヌス毒素の皮下注射(ボトックス注射)が保険適用で行える場合があります。これはボツリヌス毒素を脇の下の皮膚に注射し、神経を麻痺させて、神経と汗腺の接続をブロックし、汗腺の働きを低下させるという治療法です。治療後は患者様にもよりますが、2週間程度で効果が完成し、4~9ヵ月間、効果が持続するとされています。即効性があり満足度の高い治療です。
円形脱毛症
円形脱毛症は、毛髪が突然抜け落ちる病気で、年齢や性別に関係なく発症する可能性のある疾患です。主な症状は、頭髪の一部が円形や楕円形に脱毛することで、コインのような形に見えることから「10円ハゲ」と呼ばれることもあります。多くの場合、1~2箇所に脱毛が見られ、数ヵ月で自然に治癒しますが、時に多発したり、脱毛部分が全身に及んだりすることもあります。
円形脱毛症の原因
円形脱毛症の原因は、ストレス、神経障害、内分泌異常などがあげられていますが、完全には解明されていません。現在は自己免疫疾患や遺伝的な要因が大きくかかわるのではないかといわれています。自己免疫とは、本来、体を守るはずの免疫システムが、誤って自分の細胞や組織を攻撃してしまう現象のことです。円形脱毛症の場合、リンパ球という白血球の一種が、毛髪の成長に必要な毛包を攻撃することで、毛が抜け落ちると考えられています。
円形脱毛症は、アトピー性皮膚炎や甲状腺機能異常などの病気を合併することも知られています。これらの要因が複雑に絡み合って発症すると考えられていますが、個々の患者様によって原因は異なる可能性があります。
円形脱毛症の症状
円形脱毛症の症状は、脱毛斑の数や範囲によっていくつかのタイプに分類されます。
単発性通常型 | 頭部に1つの脱毛斑ができるタイプで、最も一般的な症状です |
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多発性通常型 | 頭部に複数の脱毛斑ができるタイプです |
全頭型 | 頭部全体に脱毛が及ぶタイプで、治療が難しいとされています |
全身型(汎発型) | 頭髪だけでなく、眉毛、睫毛、体毛など全身の毛が抜け落ちるタイプで、さらに治療が困難です |
蛇行型 | 側頭部から後頭部の生え際が帯状に脱毛するタイプです |
脱毛斑は、円形や楕円形で、大きさは様々です。基本的に円形脱毛症の症状は脱毛のみで、頭皮のかゆみや痛みなどを伴うことは多くはありませんが、外見上の変化から精神的なストレスを感じる人も少なくありません。
円形脱毛症の治療
円形脱毛症の治療は、脱毛の範囲や症状の程度によって異なります。脱毛斑が小さい場合や、発症して間もないころは自然治癒することも多いため、経過観察とする場合もあります。脱毛の範囲が広かったり、自然治癒が難しいと判断されたりした場合は、薬物療法を行います。
薬物療法としては、脱毛部分の炎症を抑えることを目的にステロイド外用薬の使用や、脱毛斑に直接ステロイドを注射する場合があります。また重症の場合にはステロイド内服薬も使用されますが、副作用のリスクがあるため慎重に用いられます。内服薬としてはほかに、グリチルリチン、セファランチンなど免疫に働きかけるものもありますが効果は個人差があります。
重症化する場合は適切な治療を行える病院へご紹介します。
治療法を選択する際には、脱毛の程度や範囲、患者様の全身状態を考慮し、判断していきます。
やけど・けが
当クリニックでは、日常生活で負ってしまった、やけどやけがの治療も行っています。やけどやけがは、早めの適切な処置によって、治る速さや傷跡などの後遺症の程度も変わってきます。やけどやけがをしてしまった際には、お早めにご受診ください。診察の結果、より専門的な治療が必要と判断いたしましたら、地域の基幹病院などに速やかにご紹介いたします。なお、当クリニックは労災指定病院ではありませんので受診の際はご注意ください。
やけどの治療
やけどは、熱湯や熱した油など皮膚が高温のものに触れてしまったり、化学物質、紫外線などにさらされたりすることで、皮膚の組織が障害され、起こります。
応急処置として、すぐに流水やタオルにくるんだ保冷材などによる冷却を行いながら、クリニックを受診してください。お子さんが全身に熱湯を浴びたなどやけどの範囲が広い場合は救急外来の受診も検討してください。
クリニックでは損傷の深さや範囲、部位によって適した外用薬、被覆材を使用し、必要に応じて抗菌薬などの投与を行います。
また、当クリニックでは自由診療を用いた傷跡の色調を改善する診療も行っておりますので、やけど痕についてもお気軽にご相談ください。
けがの治療
転倒したり刃物で手を切ってしまったりといったけがも、皮膚科で適切に処置できます。けがとしては、擦過傷、切創、裂挫創、刺創、咬傷などがあります。
汚れたもので切ったり刺したり、あるいは汚れた場所で転んで擦り傷を生じてしまった場合は、感染症のリスクがありますので、傷口を清潔にすることが重要で、流水などでしっかりと洗浄することが重要です。擦り傷などで傷口に砂利やガラス片が残っている場合は、局所麻酔の上、ブラシ等を用いて確実に取り除くこともあります。また感染予防のため、抗菌薬を使用する場合もあります。
切創(切り傷)
ナイフやカミソリ、ガラス等の破片など、鋭利なもので生じた切り傷のことです。出血や痛みが伴います。治療としては傷口の止血、場合によっては縫合することもあります。また神経や血管、筋肉にも傷が及んでいる危険性もありますので、しっかりと診察し、対応する必要があります。
擦過傷(擦り傷)
転ぶなどして表皮・真皮という皮膚の浅い部分がすりむけることで生じる擦り傷です。傷に残った異物をしっかりと取り除き、傷口が乾かないよう湿潤療法を行います。適切な湿度を保つことで、早期治癒を目指します。
挫創
鈍い物体がぶつかってできた傷、例えば転んで額を打ち、皮膚がちぎれた状態です。さらに皮膚が引っ張られることで裂けてできた傷を裂挫創と言います。傷口がきれいに切れていないことが多いので、治癒に時間がかかる場合があります。打撲をしている場合は、青あざや腫れが伴うこともあり、炎症を抑えるために冷やします。内出血が広がっている場合は、さらに詳細な診察を行い必要に応じて画像診断を行うことがあります。
咬創
ペットに咬まれるなど、動物に咬まれた傷のことです。釣った魚に咬まれたり、蛇に咬まれたりという場合も咬創です。手が人の口に当たってしまい、歯で傷がついたというのも咬創になります。動物の口腔には細菌が多く存在しており、感染症のリスクもありますので、早めの医療機関の受診をお勧めします。
治療後の注意点
やけどやけがの治療後は、以下の点に注意してください:
- 感染予防:治療後も傷口を清潔に保つよう心がけ、手洗いや消毒を徹底します。
- 日焼け対策:治癒後も紫外線を避けることが、色素沈着を防ぐポイントです。